東日本大震災から8年目のこの日を僕は日本で迎えた。
今夜はその関連番組が多く放送されていた。その一つに特に興味を引く番組があった。震災の日の夜、被災地では未だかつて見たこともないような美しい星空が出現したという。津波で壊滅した地上の様子とは対照的な、この世のものとは思えないほどの美しさ。絶望の中で見上げた星空のあまりの美しさに、気付いた人々はそれぞれが様々な思いを抱いた。亡くなった人たちが星になったと感じた人。つらい心を慰められた人。生きる希望を与えられた人。人智がおよぶこともできない自然への畏敬の念。もちろん、停電のため、町は暗闇に包まれていたことが、美しい星空を出現させた主な原因であろう。しかし、それを眺めた人間の心の状態が一層それを美しく見せたのだろうと僕は思った。
大災害ですべてを失くした人には、思考にとらわれない純粋な意識で、自然の美と崇高さをとらえることが出来たのである。「あの星は何等星で何座の何という星」というような人間の思考の産物であるレッテルを貼ることなく、素直に自然を味わうことが出来たのだ。震災の日、被災地で、あの星空を見た人たちはその瞬間に解脱(さとり)にも似た境地を味わったのだと僕は思う。その刹那は長くは続かなかったかもしれないが、それをきっかけとして「生きること」「死ぬこと」「生命について」深く考えるようになった人も多いだろう。
日本人の霊性はそのとき確かに進化したのだと僕は感じた。
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